膀胱炎はよく耳にする病気ですが、その詳しい原因や症状をご存知ですか?膀胱炎になりやすい体質だと諦めている方、妊娠中に膀胱炎になってしまった方、そこにはちゃんと原因があるのです。そして、女性の病気と思っている方、実は男性も起こる可能性のある病気です。膀胱炎を予防して、なってしまったら早めに対処できるよう、膀胱炎のことを理解しておきましょう。
目次
膀胱炎とは?代表的な膀胱炎の種類3つ
尿を溜める機能を持つ膀胱は、内側が粘膜でおおわれています。
この膀胱の粘膜が何らかの理由で炎症を起こした状態のことを「膀胱炎」と呼びます。
実は膀胱炎は、いくつかの種類に分けられます。ここではそのうち、代表的な3つをご紹介します。
≪女性に多い!≫単純性膀胱炎(急性膀胱炎)
膀胱炎というと「単純性膀胱炎」を指すことが多いです。細菌による感染症で、患者は女性が多く、男性にはあまり見られません。
急に症状が現れますが、適切な治療を行えば治りやすく、症状が長期間続くことはあまりありません。しかし、繰り返し感染することも多い病気です。
≪男性もかかる!≫複雑性膀胱炎(慢性膀胱炎)
膀胱結石や尿路結石、前立腺肥大症、糖尿病などの基礎疾患があることが多く、これらの疾患が原因となって膀胱に菌が繁殖して炎症を起こす膀胱炎で、男性にも多く起こります。
単純性膀胱炎よりも症状は軽いことが多いですが、基礎疾患の治療が進まなければ長期間続きます。
≪症状が強く原因不明≫間質性膀胱炎
一般的な膀胱炎と違い、細菌による感染を伴いません。明確な原因は現在も不明ですが、なんらかの理由で膀胱が硬くしぼんでしまうことで起こります。医師の間でも最近認識されてきた種類の膀胱炎のため、診断されるまでに時間がかかることがあります。
膀胱が膀胱炎の症状が強く現れ、強い下腹部痛や、1日20~30回トイレに行くことも珍しくありません。
膀胱炎の原因は?どんな症状が出る?
膀胱炎には上記のような種類がありますが、ここではもっとも一般的な「単純性膀胱炎」を「膀胱炎」と呼んでご紹介します。
原因
原因は細菌による感染で、大腸菌が最も多い原因菌で、多くは尿道から菌が入り込んで膀胱に炎症を起こしてしまいます。疲労やストレスが蓄積して免疫力が下がっているときに起こりやすくなります。
女性は男性よりも尿道が短く、肛門と尿道口の距離が近いことから、女性のほうが膀胱炎にかかりやすくなっています。また、月経の前後は細菌が繁殖しやすく、またホルモンバランスの関係で感染しやすい状態であるため、より膀胱炎になりやすいといわれています。
また、不潔な状態で性行為をしたときや、ホルモンバランスの変化する妊娠中にも起こりやすい病気です。
症状
頻尿
トイレが近くなり、排尿しても残っている感じがする、すぐトイレに行きたくなる、などの症状が起こり、1回の尿量は少なくなります。
排尿時痛
排尿の時や後に「つーんとした痛み」と表現されることが多く、下腹部や尿道に痛みを感じることが多いようです。排尿により炎症を起こした膀胱が刺激されることが原因です。
尿が濁る
細菌をやっつけるため膀胱に集まった白血球や、膀胱の粘膜が尿の中に排出されて、尿が白く濁ることがあります。膿が混じってどろっとした尿が出たり、臭いがきつくなることもあります。
また、膀胱の粘膜が傷ついて血尿が出ることもあります。
その他
膀胱炎では発熱や腰痛などがみられることはあまりありません。
しかし、膀胱に入った菌が腎臓にまで到達すると腎盂腎炎(じんうじんえん)となり、高熱が出たり腰や背中の痛みが起こることがあります。
膀胱炎になったらどうしたら良いの?
頻尿や排尿時痛など煩わしい症状の膀胱炎ですが、膀胱炎になってしまったときはどう対処したら良いのでしょうか?
泌尿器科を受診する
膀胱炎かも?と思ったら腎盂腎炎を合併する前に、早めに泌尿器科などの医療機関を受診するようにしましょう。
膀胱炎の原因となっている菌をやっつけるための抗生物質が処方されます。膀胱炎に抗生物質は良く効くため、遅くても1週間程度で症状は改善します。
漢方
検査では膀胱炎が治ったといわれても、尿が残っている感じがする残尿感や、下腹部の違和感が残ってしまうことがあります。そのようなときに医師に相談すると、症状を緩和する漢方が処方されることがあります。
水分を多く摂る
なるべく多く水分を摂取し、尿量を増やすようにすると膀胱内に繁殖した細菌を外に排出しやすくなります。
しかし、排尿の回数が多すぎると、膀胱に溜められる尿量が減ってか活動膀胱になったり、膀胱の粘膜の再生を妨げたりと、膀胱に悪影響になる恐れがあります。過度な我慢をするのではなく、なるべく膀胱内に尿を溜めることを意識してトイレへ行くようにしましょう。
膀胱炎は妊娠中にも起きやすい!
妊娠中はいろいろなトラブルが起きやすい時期ですが、膀胱炎も起こりやすくなるといわれています。では、その理由と対処法を見てみましょう。
妊娠中に膀胱炎になりやすい理由とは
免疫力の低下
人間は本来、異物から体を守るための免疫力を備えていますが、胎児は自分とは異なるため、体が異物と認識してしまうことがあります。それを防ぐため、妊娠中は免疫力が低下した状態にあるといわれています。
免疫力が低下すると感染症などの病気を起こしやすくなるため、膀胱炎にもかかりやすくなります。
また、ホルモンバランスが通常と異なることも免疫力の低下に繋がっていると考えられています。
おりものの増加
妊娠中はおりものの量が増えるため、陰部が蒸れて細菌が繁殖しやすい状態になります。すると繁殖した細菌が尿道に侵入しやすくなるため膀胱炎になりやすいといわれています。
細菌が繁殖した状態で性行為を行うと、さらに膀胱炎になる可能性が高くなるため、清潔を心がけましょう。
妊娠による頻尿
妊娠すると胎児の発育によって大きくなった子宮が膀胱を圧迫し、尿意を感じやすくなり頻尿になることが多いです。
これは正常なことなので心配ないのですが、頻繁に排尿することによって膀胱を収縮させる機能が弱くなってしまうと尿をしっかり出し切れずに膀胱内に尿が残ってしまうことがあります。すると膀胱内で菌が繁殖しやすくなって膀胱炎を起こすことがあります。
妊娠中の膀胱炎の対処法は?
膀胱炎と思われる症状があれば、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。
通常の膀胱炎と同じように抗生物質が処方されるかと思いますが、膀胱炎で処方される抗生物質は妊娠中に服用しても問題がないものが多いですし、かかりつけの産婦人科医の指導のもとに服用すれば心配ないでしょう。
放置して腎盂腎炎になると治療が難しくなるため、なるべく早く医師に相談することが大切です。
膀胱炎を予防するには?
膀胱炎にならないように、日常生活から気を付けるべきことをご紹介します。
過度な我慢は禁物
「尿を我慢すると膀胱炎になる」と聞いたことがありませんか?確かに、あまりにも我慢しすぎると膀胱に負担がかかったり、膀胱内で菌が繁殖しやすい状態になるようです。
しかし、前述したように何度もトイレに行きすぎると膀胱には逆効果ですから、適度に我慢をして尿を溜めてから排尿するようにしましょう。1日の排尿回数の目安は4~8回といわれています。
水分は多めに摂る
普段から膀胱内の菌を排出できるよう、水分を多めに摂ることを心がけましょう。
特に夏場は知らない間に脱水傾向になって尿量が減り、膀胱内で菌が繁殖しやすくなりますので注意しましょう。
体調管理をする
疲労やストレスが溜まっていたり、風邪を引くと免疫力が低下します。すると膀胱炎にかかりやすくなるため、バランスの良い食事を摂るようにし、十分な休息をとることを心がけましょう。
風邪や胃腸炎の後などもしばらくは免疫力が低い状態が続くため、注意が必要です。
陰部を清潔にする
特に月経時やおりものが増加しているときは陰部に菌が繁殖しやすいため、清潔を保つよう心がけましょう。
しかし、洗いすぎると体に必要な菌までいなくなってしまうので、毎日シャワーを浴びる、ウォシュレットを使う、おりものシートやナプキンをこまめに替える、という程度にしておきましょう。
細菌を尿道に近づけない
不潔な状態での性行為は膀胱炎の可能性を高めます。性行為の前にはシャワーを浴びるなどしてできるだけ陰部を清潔にしておくことが大切です。
また、トイレの後は前から後ろに向かって拭くことで菌が尿道に近づくのを防げます。
繰り返す膀胱炎や男性は精密検査を!
しっかり予防しているのに膀胱炎を繰り返す場合や、男性が膀胱炎になった場合は、他の病気が潜んでいる可能性があります。医師に相談し、詳しい原因を調べて治療しましょう。
あれ?と思ったらすぐ泌尿器科へ
膀胱炎が疑われる症状があれば、なるべく早く泌尿器科を受診しましょう。膀胱炎は抗生物質を服用すれば早期に治る病気ですが、放置して腎盂腎炎などを合併すると治療が困難になります。特に女性は泌尿器科に抵抗があるかもしれませんが、早めに受診することが大切です。
間質性膀胱炎の場合
膀胱炎の症状があるのに、医療機関で検査をしても異常がないといわれた時は間質性膀胱炎の可能性があります。
医師の間でも認識され始めたばかりの膀胱炎の種類なので、しっかり診断してもらえずに辛い思いをする方も多いようです。
間質性膀胱炎は症状が重く日常生活にも支障が出ることが多いため、大きな病院の泌尿器科への紹介状を書いてもらうなどして適切な治療を行いましょう。
さいごに
膀胱炎は、頻尿や排尿時痛など、「すごく酷くはないけど気になって仕方ない」という症状が現れて多くの女性を悩ませるやっかいな病気です。一方で、きちんと治療すれば治りやすく、予防もできる病気ですから、膀胱炎のことを良く知って、快適に生活しましょう。