夜、十分に眠ったはずなのに、昼間眠くてしかたがない。目を開けていられないほど異常に眠い。これは病気?それとも他になにか原因があるのでしょうか。症状や原因、仕事中でもできる眠気の解消方法を調べてみました。
目次
昼間に眠気がすごいのはなぜ?原因
昼間激しい眠気に襲われるのは、必ずしも病気が原因とは限りません。
健康な人でも昼間眠くなることは、けっこうあるのです。
生活習慣の乱れによる睡眠不足
日本人の平均睡眠時間は、この50年ほどの間に少しずつ減ってきています。2010年のNHKの国民生活時間調査によると、平日の睡眠時間は7時間14分。40~50代では6時間台と最も短くなっています。調査開始の1960年(50年前)に比べて1時間も減っているということです。
世界の中でも、日本人の睡眠時間はとても短いのです。2009年のOECDの調査によると、日本人は18カ国中、17位と、1位のフランスより1時間も少ないという結果です。
日本人の睡眠時間が減った理由として考えられるのが、夜型社会による夜型人間が増えたことがあります。24時間営業で夜の仕事も増えて、残業や夜間勤務などが大幅に増しました。また家にいても、夜遅くまでテレビやゲーム、パソコン、スマホなどで夜更かししている人も多いようです。1960年には夜10時半までに就寝していた人が7割近くいたのですが、1990年台半ば以降は、3割にも満たないほどに減ってしまったのです。寝るのは遅くなっても朝は遅くなるわけではないので、結果、睡眠時間が減少するということになるのですね。
昼間は交感神経が働いて活動的になり、夜間は副交感神経が優位になって心身を休ませるモードに入ります。この正しい体のリズムが保たれていればよいのですが、夜型の生活が続くと交感神経が優位なまま活動モードが続きます。やがて体のリズムが乱れてきて、心身の不調をきたします。昼間の眠気もこの一つと考えられます。
食べ物の消化によるもの
食べ物が胃に入ると、消化のため、全身を流れていた血液の一部が胃などの消化器官に集まり、消化活動が活発に行われます。そのために脳でも血流が減り、脳が酸欠気味になることから眠気を感じます。また、胃腸の働きが活発なときは、副交感神経が優位に働いているので、眠気を感じやすくなるともいえます。
食べ過ぎ、脂質の摂り過ぎ、よく噛まないで飲み込む、などは消化に時間がかかることになります。すると長時間眠気を感じることもあるといいます。
薬の副作用
風邪薬やアレルギーを抑える薬を飲むと、眠くなることがあります。
たとえば抗アレルギー薬には、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの原因となるヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン剤が配合されています。抗ヒスタミン剤の働きで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が抑えられ楽になります。
いっぽうで、ヒスタミンは脳内で眠気を抑え、覚醒を促すという働きをもっています。抗アレルギー薬を飲むと、配合されている抗ヒスタミン剤の作用で、眠気を抑えるヒスタミンの働きが弱まり、眠気を感じます。
また抗不安薬は、脳の働きを抑える作用があるので、眠くなることがあります。
女性ホルモンの影響
女性ホルモンには、大きく分けて卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2つがあります。
このなかで黄体ホルモンは、排卵から生理までの間に分泌されます。基礎体温は高温期になります。黄体ホルモンには体温を上げる働きがあり、夜になっても体温が下がりにくい状態で、質のよい睡眠がとりにくくなります。そのため生理前は、夜寝ているのに昼間も眠いといった症状が出やすくなるのです。
更年期の症状
更年期には、女性ホルモンのエストロゲンの減少によって、脳の視床下部が混乱し、自律神経が乱れてしまいます。
通常なら交感神経が昼間に活発に働き、副交感神経が夜に優位になるところですが、この働きが乱れて昼間の眠気を引き起こすと考えられます。
病気の可能性もある?
不眠症
夜寝付きが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、眠りが浅いなどの症状が続き、昼間の眠気を感じたり、体の不調が起こる状態をいいます。
不眠症のタイプ
- 入眠困難
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
床についてもなかなか寝付けない(30分~1時間以上)
眠りについても、翌朝までの間に何度も目が覚める
起きようと思っている時間より2時間以上前に目が覚めて、その後は眠れない
睡眠時間はとれているはずなのに、眠りが浅く、熟睡した感じがしない
原因
- 身体的なもの
- 心や気持ちからくるもの
- 生活習慣からくるもの
- 環境からくるもの
加齢によって増加し、中高年から老年になると急激に増えます。
また、更年期の女性など、男性より女性に多い傾向があります。
精神的なストレス、悩み、イライラ、しっかり眠ることにこだわり過ぎるなどの原因が考えられます。
アルコール、カフェイン、薬の副作用、運動不足などがあげられます。
枕が変わる、騒音、暑さ、明るさなど周りの環境にも影響されます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が何度も止まり、体内に酸素が供給されず、眠りが浅くなり、熟睡できなくなる病気です。
症状
- 睡眠中呼吸が止まり、再び呼吸をするときに大きないびきをかく
- 不規則な呼吸を苦しそうにする
- 苦しくて夜何度も目が覚める
- 夜トイレに何度も行く
発症しやすいタイプ
- 40~60歳くらい
- 太っている
- 首が短い
- 舌が大きい
- あごが小さい
- 睡眠中、上を向いている
- 飲酒する
合併症やリスク
- 合併症
- リスク
高血圧・不整脈・狭心症・心筋梗塞・心不全・脳血管疾患・糖尿病など
昼間の眠気からくる交通事故・労働災害など
過眠症
過眠症とは夜十分な睡眠をとっているにもかかわらず、昼間眠気に襲われ、何度も居眠りをしてしまう病気です。
症状
- 夜十分に眠っているのに、昼間眠い
- 寝起きが悪く、起床後もボーとした状態がしばらく続く
- 居眠りを繰り返すが、眠気が止まない
- やる気が起きない
- 不安感・イライラ
- 集中力・注意力がなくなる
原因と考えられる病気
- 特発性過眠症
- ナルコレプシー
- 長時間睡眠者
10時間以上しっかり眠るのに、目が覚めにくい。昼間過眠をとっても、長時間に渡って眠り、目が覚めてもスッキリとしない、などの症状があります。
居眠りを繰り返し、それがほとんど毎日、何年間も続くことがあります。
先天的に必要な睡眠時間が長い人をいいます。たとえば10時間以上眠らないと昼間眠くて我慢ができなくなる、などの人です。
ナルコレプシー
過眠症のひとつとされるナルコレプシー。
実は日本人にナルコレプシーの患者が多いのです。世界の平均でおよそ2000人に1人とされていますが、日本人では1000人に1.6~1.8人ほどといわれています。
症状
- 睡眠発作
- 脱力発作
- 入眠幻覚・睡眠麻痺
ナルコレプシーの眠気はとても強くて、食事中、会話中、会議中、試験中など、ふつうは緊張して居眠りなどしないであろう場面でも、急に強い眠気が起こって我慢できずに眠ってしまうことがあります。
怒り・驚き・喜び・笑い・恐怖などの強い感情が起こった時に、急に体の力が抜ける症状です。
ひざや腰の力が抜けたり、あごの力が抜けてろれつが回らなくなります。
ナルコレプシーの患者は入眠直後にレム睡眠に入ることがわかっています。レム睡眠とは体は休息状態であっても、脳が覚醒して活動している状態のことです。寝入りばなに、はっきりとした夢を見ることが多いため、現実と混乱してしまうのです。
睡眠麻痺とは、いわゆる金縛りのことです。覚醒と睡眠の移行時期に見られ、一時的に体を動かすことができなくなりますが、すぐに回復しますので安心してください。
原因
ナルコレプシーのメカニズムは、まだ研究の途上ですが、以下が今のところわかっている点です。
- レム睡眠の異常
- オレキシンの異常
- ヒト白血球抗原
睡眠と覚醒のリズムが大きく乱れているという特徴があります。それで昼間の激しい眠気が繰り返し起こると考えられます。またふつうではありえないような場面でもレム睡眠に入ることもわかっています。
オレキシンとは、脳の視床下部から分泌される神経伝達物質です。マウスや犬の実験から睡眠発作がみられる時には、オレキシンに異常があることがわかっています。
ナルコレプシーの患者は、同じタイプのヒト白血球抗原(HLA)を持っていることがわかりました。このことから、自己免疫機能が関係していると考えられています。
眠気と共にだるさも感じる時の原因・症状
ただ眠いだけでなく、体もだるいとなると、とてもつらいものですよね。
そのような症状は、次のようなことが考えられます。
かたよった食事による栄養バランスの乱れ
ビタミン、ミネラル、たんぱく質などの重要な栄養素が不足すると、からだのだるさや倦怠感を感じるようになります。
特にビタミンB群は、栄養素をエネルギーに変える働きがあるため、不足するとエネルギーが作られにくくなったり、代謝が悪くなったりすることから、だるさや疲労感を感じることがあります。
鉄分が不足すると、貧血によるだるさを起こします。
低血圧
体質的に血圧が低いのは、やせ型で虚弱体質の若い女性に多くみられます。疲れやすい、だるい、肩こり、不眠などの症状とともに、とくに午前中は元気が出ないことも多いです。
うつ病
だるさや疲れがとれず、落ち込んだり気力が低下したりします。自分の力で回復することが困難になります。睡眠障害や食欲減退などが起こり、心とからだの両面に症状が現われます。
更年期障害
女性の閉経の前後約10年間の更年期をむかえると、女性ホルモンのバランスが乱れ、からだや心にさまざまな不調を引き起こします。不眠、疲れやだるさ、のぼせやほてり、肩こり、イライラなどの症状が現われます。
慢性疲労症候群(CFS)
日常生活に支障をきたすような倦怠感や疲労感が長く続きます。全身の疲労感や倦怠感、睡眠障害、思考力の低下などの症状が現われます。
甲状腺機能低下症(橋本病)
40代~50代の特に女性に多い病気です。甲状腺に慢性的に炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌や作用の低下が起こる病気です。新陳代謝がとても遅くなってさまざまな症状が現われます。
甲状腺機能が低下すると、血圧の低下がみられ、疲れやすい、昼間も眠い、よく居眠りをする、やる気が起きない、からだが重いなどの症状も出たりします。
うつ病や更年期障害と症状が似ていて、間違われることもあるので、要注意です。
急性肝炎
肝炎の原因の多くはウイルスによるものです。A型、B型急性肝炎の初期症状は風邪に似たものですが、進むと、激しい倦怠感や高熱、頭痛、下痢や吐き気などの症状が出てきます。
仕事中でも出来る眠気解消方法とは
カフェイン入りの飲み物
カフェインには興奮作用があり、眠気やだるさをとってくれるとされます。玉露、紅茶のほうがコーヒーよりカフェインが多く含まれているそうですよ。
カフェインの入った眠気覚ましドリンクや、辛いガムも刺激たっぷりで、目が覚めますね!
食後の眠気には
食べ過ぎやよく噛まないなどの食べ方をしていると、消化に時間がかかり、眠気を感じる時間も長くなります。早く消化されるような食事の仕方を心がけることがよいですね。
- 腹八分目で食べ過ぎない
- よく噛んで食べる
- 時間をかけて、ゆっくり食べる
- 脂質をとり過ぎず、消化のよいものを食べる
ツボで眠気解消
風池
天柱のツボの指1本分外側にあるくぼみです。頭部の血行をよくします。
睛明
目頭と鼻の付け根の骨との間にあるツボ。まぶたが閉じてしまいそうなときは、このツボを刺激しましょう。
中衝・合谷
手の中指の親指側、爪の生えぎわから3ミリほど外側のツボが中衝。手の甲の親指と人差し指の骨がまじわったところから、やや人差し指のへこんだ所が合谷のツボ。デスクの下で目立たずツボ押しできますよ。
百会
頭のてっぺんの鼻と両耳の延長線が交差する点。気持ちいい程度の強さで押すと、スッキリ感が味わえます!
深呼吸
交感神経を刺激する深呼吸法があります。長く息を吸って一気に吐く方法です。息を吸う時間は、5~15秒くらい、息を吐くときは2秒くらいで一気に吐きましょう。息を吸う時には交感神経が働くので、からだが目覚める効果が期待できます。
目を閉じる
少しの時間だけ目をつむって休憩すると、目の疲れがとれ、目から入ってくる情報も遮断できるので、脳を休める効果もあるそうです。
ただそのまま眠ってしまわないように注意してくださいね。
まとめ
一言で眠い、だるいといってもさまざまな原因があるのですね。
もし昼間、眠気に襲われて生活に支障をきたすほど症状が強く、長引くようなら、一度病院を受診することをおすすめします。なんといっても質の高い睡眠をとることが、眠気を解消する根本的な対策かもしれませんね。
睡眠を見直しつつ、日々の眠気は、紹介した眠気解消方法で対処していってみてくださいね。