高齢化社会となった現在、65歳以上の高齢者のうち推定15%が認知症を発症しており、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍だといわれています。自分が認知症になったら、家族が認知症になったら、どのような対策をするべきか、今から考えておきませんか?認知症の基礎知識からその対策、さらに、認知症予防におすすめのサプリメントもご紹介します。
目次
認知症ってどんなもの?
そもそも認知症とはどのような状態をいい、どのような症状が出るのかご存知ですか?まずは認知症の基礎知識についてご紹介します。
認知症とは
認知症はさまざまな原因により、発達した知的機能が全般的・持続的に低下して日常生活に支障をきたしている状態のことを言います。
人間は生まれてから知識や知能を発達させて、社会や環境と適応できるようになりますが、主に脳の病気によってこれらが失われることで認知症が起こります。
脳の病気により分類された認知症の主な種類は、脳が委縮して機能が損なわれる「アルツハイマー型認知症」・脳の血管障害によって機能が失われる「脳血管型認知症」・原因は不明だが記憶障害よりも、人格変化と行動変化が起こりやすい「前頭側頭型認知症」・脳にタンパク質の一種が現れることで起こる「レビー小体型認知症」の4つですが、なかでもアルツハイマー型認知症の割合が最も多く、次いで脳血管型認知症が多くなっています。
また、65歳未満で発症する認知症のことを「若年性認知症」と呼び、多くは脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症や頭部外傷後遺症などが原因となっています。
認知症はこれらの種類によって出現する症状や治療法に違いがありますので、早期に受診し、適切な治療を行う必要があります。
認知症の症状
認知症の症状は大きく2つに分けられます。
中核症状
脳の神経細胞が壊れることによって現れる症状のことを中核症状といい、認知症になると必ず現れるといわれています。
具体的な症状は以下の通りです。
- 【記憶障害】─物忘れが激しくなり、直前にあったことやいつも通る道順も忘れてしまう。
- 【判断力の障害】─判断力が低下したり、筋道を立てて考えることが難しくなる。
- 【問題解決能力の障害】─予想外のことが起こると対応できなくなる。
- 【実行機能障害】─計画を立てたり、手順を考えることができなくなる。
- 【見当識障害】─今がいつなのか、自分がどこにいるのかわからなくなる。
- 【失行】─着替えなど、今までできていたことができなくなる。
- 【失認】─知っているはずの物の使い方がわからなくなる。
- 【失語】─物の名前がわからなくなったり、言葉がうまくしゃべれなくなる。
行動・心理症状
認知症になると必ず現れる中核症状に対して、人によって現れ方に違いがあるのが行動・心理症状です。本人の性格や置かれている環境、人間関係などの要因が複合的に合わさって症状が現れます。
具体的な症状は以下の通りですが、他の症状も出現する可能性があります。
- 【興奮(暴言・暴力など)】─介助者や周囲の人に暴言や暴力をふるう。
- 【抑うつ】─気分が落ち込み、以前好きだったことにも興味を示さなくなる。
- 【睡眠障害・昼夜逆転】─いつまでも眠らなかったり、昼間寝て夜起きている。
- 【幻覚】─実在しないものを見たり、感じたり、聞いたりする。
- 【妄想】─妄想したことが現実だと思い込む。ものを取られたなどの被害妄想など。
- 【多弁・多動】─いつまでもしゃべっていたり、いつまでも動いている。
- 【徘徊】─家の中や外をうろうろと歩き回る。
- 【不潔行動】─失禁をしたり、便尿を触ったりこねたりする。
- 【過食・異食】─食べ過ぎる。食べ物でないものを食べようとする。
認知症の対策
高齢化が進み、認知症や認知症による徘徊などの症状は社会問題にもなっています。認知症になってしまったら、どのような対策が必要なのでしょうか?政府の推進する認知症対策や、便利な認知症対策グッズもご紹介します。
早期発見と早期受診が大切
認知症は早期に発見することが重要だと言われています。早い段階で発見、受診することにより、病気を治療し認知症を治すことができる場合があったり、進行を遅らせることができる場合があるためです。また、症状が重くなったときに対する環境や心の準備を本人や家族が行うことができます。
認知症かもしれない、という発見は、本人より家族が気付くことが多いようです。「昔のことは覚えているけれど、ついさっきのことを忘れている」、「場所は分かっているけれど、時間や日付があいまい」、「以前興味があったことに興味がなくなっている」など、「なんだかおかしいな」と思うようなことがあれば、早い段階で医療機関を受診するようにしましょう。
政府の対策
高齢化社会を迎えた日本では、認知症対策が進みつつあります。厚生労働省は平成24年に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)を策定しました。これは、「認知症高齢者等にやさしい地域づくりを推進していくため、認知症の人が住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることに的確に応えていくこと」を目的としており、以下の7つの柱から成り立っています。
- 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
- 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
- 若年性認知症施策の強化
- 認知症の人の介護者への支援
- 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
- 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
- 認知症の人やその家族の視点の重視
詳しくは厚生労働省作成の新オレンジプランのパンフレットをご覧ください。
(引用:
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf)
家庭での対策
家庭で認知症の介護をするのは家族にとって大きな負担となることが多いです。お互いが安全に安心して暮らせるような工夫が必要となります。
認知症では物忘れや見当識障害などで日付や時間を何度も聞かれることが多いようです。
そのため、見やすい場所にメモを残す、日付の表示されるデジタル時計を用意する、カレンダーに毎日○を付けてもらう、などの工夫をしましょう。
また、徘徊がある場合は、できるだけ一人にさせないよう、介護保険のサービスを利用しヘルパーさんを頼んだり、玄関やドアにセンサーを設置するなどすると安心して過ごせるようです。
担当のケアマネージャーや地域包括センターなどと相談しながら、できるだけ家族の負担を少なくして介護を行える方法を探しましょう。
認知症対策グッズ
徘徊対策
徘徊した認知症の方が電車にはねられて死亡し、この事故によってかかった振替輸送費などに対して鉄道会社が損害賠償請求訴訟を起こした裁判は記憶に新しいと思います。また、徘徊による行方不明者も増加しているといわれています。現在はこうした認知症徘徊のための対策グッズが次々と開発されています。
例えばこちらの「見守りシューズ」は、携帯電話やバッグを持たずに徘徊してしまっても靴は履いているというところに着目した商品で、靴にGPS装置がついているためスマホやパソコンで位置情報を把握できるというものです。
不潔行動対策
普通のパジャマだとどうしてもズボンからお尻に手を入れて便を触ってしまう、ということがあります。
そんなときはパジャマの上衣と下衣が一体化したツナギタイプがおすすめです。着替えも楽に行えるように工夫されているようです。こちらは一例です。
(引用:
http://www.scrio.co.jp/store/categories/care-wear/one-pajamas/2262.html)
しまい忘れ、物とられ妄想対策
自分で大切な物をしまい忘れた結果、どこにあるか分からなくなってしまい、誰かに盗まれた、という妄想に発展することが良く起こるようです。
こちらの「さがしもの発見器」は大切なものに受信機を付けておき、無くした時にエアーブザーを押しながら探すというものです。しまい忘れる物がだいたい決まっている場合はこのようなものが便利かもしれません。
薬の飲み忘れ対策
大切な薬でも飲み忘れてしまう、飲んだことを忘れてまた飲んでしまう、ということが頻繁に起こるようです。
こちらの「服薬管理 週間投薬カレンダー」は壁掛けタイプで本人も家族も見やすく、朝昼夕に分けてセットすることができます。
認知症を予防するには?<認知症になりにくい5つの生活習慣>
自分も家族も認知症になるのは嫌ですよね。では、認知症を予防する方法はあるのでしょうか?実は、認知症になりにくい5つの生活習慣があるといわれています。詳しく見てみましょう。
食習慣
近年の研究で、ビタミンEの多い食習慣がアルツハイマー型認知症を予防する効果があることがわかってきたそうです。
また、ビタミンB群、ビタミンC、βカロテン、カルシウム、亜鉛、鉄などのミネラルが少なかったり、コレステロールなどの脂質の摂取量が多いと認知症になりやすいと言われています。
さらに、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸と呼ばれる栄養素の摂取が認知症予防に効果があるといわれています。
運動習慣
週に3日以上、1回30分程度の有酸素運動をしていると認知症になりにくいといわれています。ウォーキング、ジョギング、水泳などが効果的なのだそうです。
対人接触
人付き合いが多い人は認知症になりにくいといわれています。一人暮らしの高齢者で外出せず閉じこもりがちな人ほど認知症になりやすいのだそうです。
知的行動習慣
認知症になると低下しやすい記憶力や注意力、判断力などを刺激するために、チェスやオセロなどのボードゲームやパズル、文章の読み書き、楽器の演奏、ダンスなどを行うと認知症になりにくいといわれています。
睡眠習慣
睡眠障害がある人は認知症になりやすいといわれています。十分な睡眠時間を確保し、熟睡感を得られるような睡眠の質を確保しましょう。起床後は日光を浴びることもたいせつなのだそうです。また、30分以内の昼寝の習慣があったほうが認知症になりにくいといわれています。
まとめ
超高齢化社会を迎える日本にとって認知症に伴う問題は切っても切れない大切なものになっています。まずは生活習慣を見直して予防に努めることから始めましょう。早期発見と早期受診のために家族とコミュニケーションをとる時間を増やすことも大切です。認知症になってしまったら、本人も家族も安心して安全に暮らせるよう、地域の相談窓口などを活用し、生活を工夫することも大切ですね。