現在、数多くの病気や障害等が存在します。
それは妊娠中に発症するものも多くあり、その一つが「水頭症」です。
あまり聞き慣れない「水頭症」ですが、その発症数は決して少なくはありません。
水頭症とはどんなものなのか、詳しくご紹介していきます。
目次
胎児が水頭症になる確率はどれくらい?
まずは水頭症とはどんなものなのか、見てみましょう。
水頭症って?
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水頭症とは脳室(脳の中の水がたまる部屋でそれぞれ側脳室・第3脳室・第4脳室などと名前の付いた部屋があります。)などに異常に大量の髄液(脳や脊髄の周りを循環している透明の水)が貯留し、脳室などが拡大した状態を言います。
髄液はほとんどが脳室内の脈絡叢というところから産生され、両側のモンロー腔(側脳室と第3脳室の通路)を通り、第3脳室・中脳水道(第3脳室と第4脳室の間の狭い通路)を経て第4脳室にいたりそこに存在する出口(マジャンディ孔およびルシュカ孔という名前が付いています。)から頭や脊髄のくも膜下腔(くも膜という膜で覆われた脳脊髄液が循環する腔)を循環しながら、主にくも膜顆粒から上矢状洞という静脈の中へ吸収されます。
成人では、脳脊髄液は頭蓋内と脊柱管内をあわせて150㏄存在し、1日に3回循環するので、1日では、約450㏄もの髄液が産生されては吸収されています。
何かの原因で (1) 脳脊髄液が異常に多く産生されたり (2) 髄液の循環が脳室の中の通り道のどこかで閉塞したり (3) 髄液の吸収が障害されることによって水頭症という病態が起こってきます。
(引用:
http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/suiT02.htm)
大変難しい用語が並んでいますが、簡単にまとめると「脳に髄液が溜まってしまう」事を水頭症と呼びます。
水頭症は、本来脳を衝撃から守る役割を果たしている髄液が必要以上に多く溜まってしまう病気です。
すると脳が圧迫される等して、障害を引き起こす事があるのです。
水頭症には胎児期に発症するものと、産まれてから脳内の出血や感染等の理由で発症するものがあります。
この胎児期に発症する水頭症を「先天性水頭症」と呼びます。
先天性水頭症になる確率は?
先天性水頭症は、現在約1,000人に1人の割合で発症しています。
これはダウン症や口唇・口蓋裂、心室中隔欠損症に次いで多い数字で、胎児に起こる病気の中で4番目に多いとされています。
先天異常は新生児全体の約5%程と言われていますが、その中でも比較的起こる確率の高い病気なのです。
また技術の発展やデータ収集の割合等の影響もありますが、1970年代に比べて先天性水頭症の発症率は約6倍も多くなっているのです。
水頭症の原因と症状は?いつエコーでわかるの?
水頭症の原因
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先天性水頭症のほとんどは脳の神経が発達する過程で、何らかの異常が起こる事が原因とされています。
しかし異常が起こるはっきりとした原因は、まだ分かっていません。
また胎児期の頭蓋内出血や、母体からのトキソプラズマ症やサイトメガロウィルス感染症等で水頭症が併発する場合もあります。
このトキソプラズマ症は猫科の動物の排泄物から感染する可能性が高く、妊娠中は特に感染に気を付けなければならない感染症です。
サイトメガロウィルス感染症は世界中にあるウィルスで、アメリカでは40歳までに約80%もの人が感染するとも言われています。
これは感染しても症状がない事が多く、感染者の体液等から感染が広がるので注意が必要な感染症です。
妊娠中に母体がこれらの感染症や風疹等にかかってしまう事が、水頭症を引き起こす原因となってしまう事もあるのです。
また遺伝により発症する場合もあり、母親が水頭症の場合には約50%の確率で子どもも水頭症を発症すると言われています。
水頭症の症状
水頭症の症状には、様々なものが挙げられます。
時期別に見てみましょう。
乳幼児期
- 呼吸や脈が安定しない
- 大泉門が張ってしまう
- 嘔吐
- 意識障害
- 首の座りが遅い
- 頭皮が光り、血管が見える
学童期
- 意識障害
- 嘔吐や頭痛
- 物が二重になって見える
- バランスが取れない
- 視力がどんどん低下する
- いつも機嫌が悪い
この様に、成長と共にその症状は変わります。
また水頭症と診断された場合でも、約20%は後遺症もなく健康に産まれてきます。
そして約30%は軽度の障害はあれど、日常生活に問題はないとされています。
約20%は一部介護が必要な状態で、約25%が全面的な介護が必要となってきます。
いつエコーでわかるの?
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先天性水頭症は、約55%がエコーでその可能性を発見する事が出来ます。
しかしエコーではあくまでも頭の大きさを見る事しかできませんので、最終的な判断はMRI検査の画像診断が一般的です。
MRI検査で側脳室三角部の長さを調べ、10mm以上の長さであれば「水頭症が疑われる」という診断になります。
また水頭症の判断がしっかりと出来る様になるのは、妊娠22週を過ぎてからと言われています。
胎児が水頭症と診断された場合の出産の時期については、胎児の頭の大きさによって異なります。
頭の大きさがあまり大きくならない様であれば、出産予定日を待っての自然分娩が可能な場合もあります。
しかし頭が急激に大きくなってしまう様であれば、早めの分娩となる場合も出てきます。
どんな治療をしていくの?
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では、水頭症と診断された場合には、どんな治療をしていくのでしょうか。
水頭症の約半数は妊娠中に診断されますが、妊娠中にできる治療はほとんどありません。
そのため水頭症の治療のほとんどは、出産後すぐに開始されます。
その治療法は「脳室腹腔シャント術」と呼ばれ、体内にシャントと呼ばれるシリコン製の管を入れて脳内で過剰に生成された髄液を腹腔まで通し、腹腔で吸収させるというものです。
この脳室腹腔シャント術は、成長と共に管を伸ばす手術が何回か必要となってきます。
また3ヶ月毎に、シャントの定期健診も必要です。
シャントは一生体内に残るものですから、体の一部として上手に付き合っていかなければならないのです。
また神経内視鏡を使用する治療法もあり、この治療法は脳室腹腔シャント術に比べて手術回数も少なく済みます。
これは脳室に穴を開けてくも膜下腔と繋げる事により、髄液を自然に流れる様にするものです。
しかしこの治療法は、現在生後6ヶ月を過ぎてからでないと行えない手術となっています。
水頭症はこれらの治療を行う事で、その症状を和らげる事が出来ます。
そして軽度の水頭症の場合には、日常生活を問題なく送れる事もあるのです。
実際の体験談
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実際に、妊娠中に胎児が水頭症と診断された体験談をいくつかご紹介します。
28wのときスクリーニングエコーで脳内異常があると言われ、すぐ設備が整った大きい病院に行くことになりました。
そこでの検査結果は「水頭症の疑い」。入院となり、羊水検査→異常なし、MRI→異常が見つからない・・・でもその後は次々異常が発見されました。2本あるはずの臍帯動脈が1本無い、子宮内胎児発育不全、心臓に小さな穴、右軸偏位。お腹の張りは常にありました。
35wまでお腹で育ててから出産しようと担当医と計画し、いろいろ予定も立てたのですが、34w6dにお腹の張りがひどくなり、緊急帝王切開で1,910gの男の子誕生。息子はすぐさまNICUに入りました。
水頭症はよくならず、誕生2か月目にシャント手術。術後半月で体調が良好になり退院しました。現在は4か月で体重5,000gです。同じ月齢の子と比べるとまだまだ小柄だけど、修正体重と比べると順調です。シャントも異常なし。成長を見守るしかありません。
(引用:
https://www.mcfh.or.jp/jouhou/taikenki/taiken1211.html)
ある水頭症のお子さんと1歳の時に知り合いました。
そのお子さんはお腹にいる時に水頭症だとわかったそうです。
それでもご両親は出産を決意されて生まれました。そしてこの子はいつかは障害児の中で教育を受けることになると思うから今しか健常の子供と接することはできないと
障害幼児が通う施設には通わずずっと普通の幼稚園に抱っこして毎日通われました。
抱っこして他のお子さんと鬼ごっこをしたりしていたそうです。一般のお子さんの中で育ったその子はとても明るくいつも笑ってニコニコしているお子さんに育ちました。
小学校から養護学校に行きましたがご両親と車で北海道旅行に出かけたり楽しいこともたくさん経験して立派な中学生になりましたよ。
(引用:
http://www.babycom.gr.jp/voice/kourei/index13.cgi?action=view&disppage=2&no=19981)
こちらは、実際に水頭症として産まれた方の体験談です。
私の子供の頃の話ですが。
私自身が産まれた時に水頭症と診断されました。
もしかすると植物状態もしくは知的障害が残ると言われていたらしいです。
その後、何度も手術を繰り返し、入退院を繰り返していました。
経過を見る為の通院も小学校卒業まで続きました。
今でも頭の中には管が残っています。
そんな私も先日出産し親になることができました。
両親には長い間苦労をかけましたがとても感謝しています。
(引用:
http://www.jineko.net/forum/%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E3%83%BB%E5%87%BA%E7%94%A3%E3%81%AE%E5%BA%83%E5%A0%B4/199714/)
一口に水頭症と言っても、その程度は様々です。
また産まれてみないと、実際の程度等は分からないといった面もある様です。
しかし適切な処置を受ける事で、ほとんど障害も残らずに生活できる事もあるのです。
胎児期水頭症の予防法は?
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先天性の水頭症の場合、今現在詳しい原因が分かっていないため予防法はありません。
しかし感染症等により併発する水頭症の場合には、感染症にしっかりと注意をする事で防ぐ事ができます。
妊娠中は食べ物や生活環境に特に気を遣い、胎児を守っていく事が大切です。
出来る限りの予防処置をしていく様にしましょう。
まとめ
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水頭症の半数は妊娠中に判明し、その発症率は約1,000人に1人と言われています。
しかしその程度は様々で、ほとんど後遺症や障害なく生活できる様になる事もあります。
また出産後に手術を受ける事で、その症状は和らげる事が出来ます。
病状をしっかりと医師と話し合い、産まれてくる赤ちゃんに対する最善のケアを考えていきましょう。