暑くなってくると熱中症が気になりませんか?総務省によると、平成27年5月から9月までの全国における熱中症による救急搬送人員数の累計は5万5,852人となっており、東京都だけでも100人以上が死亡したそうです。甘く見ていると命の危険もある熱中症ですから、正しい知識を身に付けてしっかりとした対策を取りましょう。熱中症の初期症状から重度の症状、対策や予防についてなど、詳しく解説します。
目次
熱中症の基礎知識
熱中症とは
熱中症は高温の環境に身体が適応できずに起こる障害の総称のことです。普段、身体の中では熱を生み出す「産熱」と熱を放出する「放熱」のバランスがとれている状態ですが、このバランスが崩れると、熱中症が起こります。
熱中症になりやすい条件
行動
主に高温の日に、慣れない運動や激しい運動をしたときや、長時間の屋外作業をしたとき、さらに水分補給ができない状況であると大量の熱をかき、熱中症になりやすくなります。
からだ
下痢やインフルエンザなどの病み上がりや、栄養不足や二日酔いなどで体調が悪いときはすでに脱水気味のことが多く、熱中症になりやすい状態です。糖尿病や精神疾患がある人も熱中症になりやすいといわれていますので注意しましょう。
特に乳幼児や高齢者は熱中症になる可能性が高いといわれていますので詳しくみてみましょう。
乳幼児
乳幼児は、普段から新陳代謝が活発で体温が高くなっていますが、うまく体温調節をすることができないため特に注意が必要です。
さらに背が低いことやベビーカーに乗っていても、大人より低い位置に体があり、地面からの照り返しを受けやすいため、体温が上がりやすくなります。大人がしっかり注意して観察してあげましょう。
高齢者
高齢者は子供や成人より身体の中の水分の割合が少ないのが特徴ですので、汗をかくと脱水状態になるのが早く、同じ環境にいても高齢者の方が熱中症になりやすくなります。
さらに、トイレが億劫だったり喉の渇きを感じにくいことなどから水分摂取量が少ないことや、クーラーが苦手で暑い部屋に閉じこもりがちなことも原因に挙げられます。
高齢者は心機能や腎機能が低下していることが多いため、熱中症になった時に重篤になりやすいので注意が必要です。
環境
真夏の気温が高い昼間は熱中症にかかる代表的な時間帯ですが、ほかにも熱帯夜が続くと体温が高い状態が続くため夜でも熱中症になりやすくなります。また、5~6月の急に暑くなる日や梅雨の晴れ間など、体がまだ暑さに慣れていない時期の高温も危険です。
高温、高湿のほか、熱いものがそばにあるときなどにも注意しましょう。
暑さ指数(WBGT)をこまめにチェックすることも重要です。
暑さ指数(WBGT)とは?
身体の産熱と放熱のバランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱(地面や建物、体から出ている熱)」の3つを取り入れた指標のことで、気温の効果:湿度の効果:輻射熱の効果を1:7:2の割合で表し、単位は「℃」です。
日常生活では25℃未満が注意、25~28℃が警戒、28~31℃が厳重警戒、31℃以上が危険とされており、運動時においては、21℃未満がほぼ安全、21~25℃が注意、25~28℃が警戒、28~31℃が厳重警戒、31℃以上が運動は原則中止となっています。
各地域の暑さ指数の実況と予測が環境省熱中症予防サイトから見ることができます。
熱中症の重症度と症状
初期(Ⅰ度)
熱失神
暑いところにいたり運動すると体温があがり、皮膚の下を流れる血流量が増えて放熱が促進されます。
すると脳への血流量が減り、一時的にめまいや失神を起こすことがあり、これを熱失神と呼んでいます。
【症状】
- めまい
- 失神
- 眠気がある
- 顔面蒼白
- 脈が速くなる
熱痙攣(ねつけいれん)
身体は血管から汗を作り、汗を蒸発させることで体温をさげて放熱します。汗のなかには塩分などの電解質が含まれており、汗をかいたときに塩分を補給しないと体内が塩分不足になります。
塩分には筋肉の収縮を調節する働きがあるため、手足がつったり、筋肉痛や筋肉の痙攣(けいれん)を起こすことがあり、これを熱痙攣と呼んでいます。
【症状】
- 筋肉痛
- 手足の筋肉の硬直(こむら返り)
- 筋肉の痙攣
中期(Ⅱ度)
熱疲労
汗をかいて放熱する際、水分も汗として蒸発します。
このときに十分に水分補給をしないと脱水状態になりますが、この状態が続くと頭痛や吐き気などの症状が重なりあって熱疲労と呼ばれる状態になります。放置したり判断を誤ると重症化するため注意が必要です。
【症状】
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 下痢
- 倦怠感
- 虚脱感
- 失神
- 判断力や集中力の低下
- 体温が高い
- 尿の色が濃くなる
重度(Ⅲ度)
熱射病
初期・中期の状態が進むと体温調節が追い付かなくなり、異常に体温が上がるため脳に影響が及んで意識を失ったり、言動がおかしくなったりし、熱射病と呼ばれます。
命の危険がある状態なのですぐに救急車を呼んでください。
【症状】
※中期の症状と重なって起こることが多い
- 意識障害
- 言動がおかしい
- 呼びかけや刺激への反応がおかしい、または乏しい
- 体温が高い
- まっすぐ歩けずふらつく
- ガクガクとひきつけがある
- 全身性のけいれん
- 過呼吸
- 汗をかかない
隠れ熱中症
熱中症の初期には隠れ脱水症状という状態になるそうです。その症状は以下の4つです。これらがみられた場合にはスポーツドリンクなどで水分補給をしましょう。
- 手が冷たくなっている
- 指の爪を押してピンク色に戻るのに3秒以上かかる
- 手の甲の皮膚を引っ張り元に戻るのに3秒以上かかる
- 舌の表面がザラザラして赤黒い色になっている
症状がみられたときの対策!
熱中症が疑われたら、すぐに涼しい場所へ移動させ、衣服をゆるめて体を冷やします。
意識がはっきりしていなかったり、自分で水分補給ができない、時間がたっても症状が良くならないなどの場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
初期、中期
涼しい場所で水分補給をして横になり、足を高くして脳への血流量を増やします。足や腕をマッサージし、体の中心へ血液が向かうようにするのも良いでしょう。
筋肉の異常がある場合は塩分などの電解質を含む飲み物を摂取しましょう。普通のスポーツドリンクよりもさらに電解質を多く含むものがあればなお良いです。
症状が改善されない場合は医療機関を受診してください。改善しても念のため受診しておくことをおすすめします。
重度
すぐに救急車を呼んでください。救急車が到着するまでは、濡らしたタオルを体に当てたり水をかけたりして体を冷やしましょう。氷やアイスパックがあればタオルにくるんで脇の下や足の付け根、首筋などの太い血管に当てることで効果的に体温を下げることができます。
発熱の際などにおでこを冷やすことがあり、気持ち良いと思いますが、体温を下げるという点ではあまり効果がないので注意してください。
熱中症を予防するには?
強い体づくり
まずは熱中症にかかりやすい体を日頃から作ることを大切にしましょう。バランスの良い食事をしっかり食べることや、十分な睡眠をとることで、丈夫な体を目指しましょう。
また、日頃から運動時などに水分・塩分補給をこまめに行う癖をつけておくのも良いですね。
室内の暑さ対策
暑い時期は体温が体にこもらない工夫をしましょう。室内でも熱中症になることはありますから、通気性の良い麻や綿などの服を選ぶなど、衣服を工夫したり、室温や湿度をこまめに確認し、クーラーや扇風機を活用して室内を涼しく保つよう心がけてください。
最近は様々な冷却グッズが販売されているため、上手に使って昼も夜も快適に過ごせる工夫をしましょう。
寝る前にトイレを気にして水分を取らない人もいるかもしれませんが、熱帯夜には脱水になりやすくなるため、布団に入る前に水分を取っておきましょう。
外出時の暑さ対策
外に出るときは帽子をかぶる、日傘をさす、肌が露出しない通気性の良い服装を心がけるなどして直射日光を避け、水分を持ち歩いてすぐに水分補給ができるような対策が大切です。
乳幼児をベビーカーに乗せての散歩は日が高いときを避け、夕方、日陰を選んで行うほうが良いですね。
外で活動する場合は、早めに日陰で休憩をとるようにするとともに、自分や周囲の人の体調を観察して異常の早期発見に努めましょう。
水分補給におすすめ
最近、熱中症予防に「OS-1」という飲み物を勧めるCMや広告を目にすることがありませんか?
大塚製薬から発売されたOS-1は経口補水液と呼ばれ、軽度から中度の脱水症状に適した飲み物です。従来のスポーツドリンクより糖質が低く、電解質濃度が高くなっており、水分や塩分を速やかに吸収できるため熱中症の予防や対策に推奨されています。大量に汗をかくことが予想される夏の運動時や外出時には携帯しておくと役立つかもしれませんね。
ただし、普段飲むには塩分濃度が高いため、注意してください。
手作り経口補水液
OS-1のような経口補水液は自分で作ることもできます。水1リットルに塩小さじ1/2(3g)と砂糖大さじ4と1/2(40g)をしっかり混ぜるだけです。
自宅での熱中症など、すぐに作れる環境にある場合は覚えておくと便利ですね。
さいごに
熱中症の基礎知識から症状、予防法まで詳しくご紹介しました。冒頭にも触れましたが、熱中症は甘く見ていると命を落とす危険があります。昔は根性論で夏の運動時にも水分補給をしないことが多かったですが、現在はしっかり休息をとり、水分と塩分を補給することが推奨されていますよね。正しい知識があれば熱中症を防ぐことができ、早期発見と応急処置ができるようになります。夏の楽しい外出などが残念なものにならないよう、しっかりと対策をしましょう。